UTMB~その⑦

 Champex-Lacにて

やっとのことでChampex-Lacにたどり着く。
Arnuvaからここまでほぼ飲まず食わず。
いよいよエネルギーの枯渇ぶりが顕著になり、
これ以上の前進が難しくなってきた。

ここからゴールまで40K。山を3つ越えなければならない。
制限時間も押し迫っており、この状態では残りの行程を挑むまでもなく、
時間切れ、もしくはリタイアを申告しなければならないことは明らかだ。

であるならば、ここChampex-LacでDNFということになるのだが、
DNF後のChamonixへのバス移動が、ボク自身の大きな壁となる。

乗り物、とりわけバスなどにたいする乗り物酔いは重篤で、
ただでさえ気分が悪いのに、バスに乗って山道を数時間もゆられるというのは
拷問に等しい。
昨年も、車中でゲロゲロしながら、「こんなことなら這ってでも進めば良かった」
と後悔した
とはいえ、これ以上進むこともままならない‥。

考えた結果、取り敢えず寝ることにする。
寝るといっても、関門時間まで1時間も無い。
関門時間と同時にエイド撤収とはならないだろうから、何とかお願いして、
朝まで寝かしてもらおう。
その後、どのような手段で帰るかは、またその時に
そして泥だらけのマットレスと毛布にくるまり就寝

しばらくすると、脚をたたかれる。
どうやら、関門時間が迫っているということらしい。
周りを見渡しても仮眠室には2~3人しかいない。時計を見ると関門時間15分前。
‥どうする?
しかし、起き上がってみると、吐き気はおさまっていて、なんとなしにすっきりとした気分
改めて高低図を見てみると次のTrientまでは山1個半、制限時間は5時間30分後‥。
行ける‥か?行くことにする

先に進むことを家族に伝え、急いでパスタとスープを食べる、というか食べられた
関門5分前、エイドを出発する。相変わらず息が上がると吐き気もこみあげるので、
ひたすら歩く。登りも下りも。ペースを一定に。

 またもや写真なし

 ゴール後家族の者に聞いたのだけれど、関門時間が過ぎたChampex-Lacでは
あっさりとエイドの撤収が始まったらしい。
危なかった一日本人の気持ちの悪さなど関係なくことは進んでいたことだろう。