トレニックワールド100マイル~その③

 南回り1周目
南回りの1周目に突入し、桂木観音へ向かって登るも、やたらと苦しい
しかも遅い
遅いの苦しいのだから、やるせない気持ちだけしか感じない。
平坦なところや下りは走れるけれど、登りがこんな感じで、思考はひどく後ろ向きだから、自然、必要以上に足取りは重くなる。
桂木観音から高山不動尊での登りでは、さすがに息が上がって気持ち悪くなってきた。

関八州見晴らし台はツツジがきれいで、とても幻想的。何にもないときに来てみたい。

高山不動尊で10分ほど横になる。
嘔吐したら、以後補給を満足に取れなくなり、レースの続行が不可能になる。
それ以前に、気持ちが萎える
取り敢えず、出発する。とにかく、心拍数を上げないように、ソロソロ~っと登り、ソロソロ~っと走る。
これがまた、精神衛生上よろしくなくて、なお疲れる
もうこの時点で止めることを考えていた。

この頃には暗くなっていたので、ライトをつけていたが、こんなに走りづらかったかな?というくらい木の根が這っていて、走るのも満足に走れない。
一応ジェルはとるが、吐き気は続いていたので、ちょっとした拍子に吐きそう‥

疲れ切った状態でノロノロ進んでいると、ろくなことを考えない。
止めるための言い訳しか出てこない。70K、80Kくらいになると、滅多に人にも会わなくなるが、たまに会うのは抜かれるとき
抜かれて自分の目の前からすぐに見えなくなると、余計にろくなことを考えない。
(その割に、次のエイドにつくと、随分と前に抜かされたランナーさんがいたりするから、実際のところ、感じているほど圧倒的な差はなくて、自分もまだまだいけたのかもしれないが、そうは考えられなかった)
つまり、ボクはやめることを決めていて、いろいろな言い訳はそのための方便に過ぎなかった。
そして、それは自分でもよく分かっていた。分かっていたけれど、それを覆す気持ちがなくなっていた。

やっとのことでニューサンピア埼玉おごせに到着。南回り1周目終了。

タイムを見ると21時間くらい。北回りが8時間かかっていたから、当地エイドでの準備時間を除くと、南回りは約13時間弱費やしたことになる。
これでも十分遅いのだけれど、この時点で自分は北回り7時間40分くらい、南回り13時間30分くらいかかっていると思っていた。
(この“‥くらい”というのも曖昧で、冷静な判断を阻害する一因だった
残りは14時間、今から南回り2周目の準備をしなければいけないから14時間弱。これから暑くなるであろう時間帯にあのコースを同程度の時間で帰ってくる‥。ムリ絶対ムリ

というわけで、リタイアを申請して、おしまい
南回り2周目に突入する人は、1周目のランナーさんと区別するためにタスキを渡される。
いったん僕が渡されたタスキには「23」と書いてあった。
つまり23番手だったということだろう。
ボク以降に2周目に突入した人はいなかったようだから、完走者は20名前後になるのかな?
(実際は15名だった)

何にしても、完走された方はすごいです。

帰宅してから、タイムを確認したら、上記のように南回り1周目が13時間弱だったことが分かった。
我ながら、「こんなにゆっくり進んでいていいのだろうか?」と思うくらいゆっくりだったが13時間‥。
暑くなるとはいえ、明るくなって視界も良くなり、ゴールが近い、という高揚感があれば14時間弱で完走できたかも‥
などというのは、しょせん皮算用で、あの時、そのように考えることは出来なかった。結局、自分の弱さが前面に出て、弱さを十分に了解したうえでレースを中断した。
年齢だけで考えれば、“経験値に根差した粘り”こそが自分の利点なはずなのに、その利点を捨てたら何が残るのだろう?
ボクは自分を裏切ったのだな~、としみじみ思ったのでした
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