Trails In Motion5

先日、ATCstoreに「Trails In Motion5」を観に行きました。
昨年も「Trails In Motion4」を観て、走る行為を自身の思想や哲学に重ね合わせる姿勢に共感できて、とてもよい作品群だった


そして今回。
気のせいかもしれないけれど、ドローンによる撮影が手軽にできるようになったせいか、インディペンデントな作品にも空撮が多いなと思った。
映像はきれいだし迫力があって、それはもちろん悪くはなかった。

両端が切り立った岩場をピョンピョンと走る姿はとてもマネできるようなものじゃないし(怖くないのかな?)、FKTについての作品は「仕事どうしてるのかな?」と思いつつも、長期にわたるチャレンジは単純にすごいな~、と思うモノだった。

 FKTとは、Fastest Known Time(ファステスト・ノウン・タイム)の略で、意訳すれば「トレイル最速記録」のこと。アメリカではサポートのあるなし、でいくつかのカテゴリーに分かれているらしい。

でも、個人的に良いと思った作品は2つで、そのどちらも高齢者のトレイルランナーを扱ったものだった。

「The Hard Way」 
なんと89歳のトレイルランナーの作品。
一人暮らしで小さな牧場(牛2・3頭?)を営みながら、いまだ、トレイルレースに参加している。
薄く降り積もった雪のトレイルを一人走る姿が格好良い
彼にはラン友の女性がいて、その方もまあまあの高齢なのだが(60代くらい?)、彼女が彼に「好きなレースは?」という質問をしたそうだ。その時の答えが「次のレース
まだ走れる、という喜び、レース、さらにその向こうにある自らの限界に挑む姿勢、そうした想いがこの答えには込められていて、とても格好良い
彼にとって「走る」ことは(文字通り)「生きること」で、「走れなくなったときは死ぬとき」だそう。
作品中では50Kのレースでは体調不良によりリタイアしてしまったが、その後の30Kのレースでは見事完走されていた

「Thirty Hours」 
ウェスタンステイツに参加した72歳ランナーの作品。
37歳から走り始め、以後35年間毎月レースに参加しているそう
最初のエントリーから6年越しで同大会に参加することができ、走った。
しかし、結果は30時間の制限時間に2分弱間に合わず、ゴール後は医務室に運ばれた。
ゴール直前、足取りもおぼつかない中、完走への執念から少しでも前に進もうという意志の強さが胸を打つ。
彼は翌年(つまり今年)もエントリーしたのだが、抽選には漏れて、現在キャンセル待ち。しかし上位のキャンセル待ちのランナーが呼びかけ、彼を参加させようと、次々とキャンセル待ちを辞退しているそうだ。
作りは欧米映画によくあるお涙頂戴的な感じだが、それに見事に乗っかり?ゴール直前あたりからウルウル

ボクは彼らよりはるかに若いとは言いながら、相対的にみれば決して若くはない。
記録を目指す、速さを目指す、というよりも、今後年齢を重ねるという現実を考えれば、彼らのようなアプローチを目指す方が断然近い。

彼らの年齢に近づく、あるいは達した時に、そのように走っていることができれば、と思う。

 そして何より強く思ったのが、「トレニックワールド」でDNFする前に、観たかった~、ということ。
もし、これを見ていたら、絶対DNFする、なんて思わなかったのにな~

Trails In Motion5