UTMFその5

 二十曲峠~富士小学校

完全にゾンビの出来上がり
ゆっくり登って、ゆっくり下りる。たまに、ちと走る。
後ろからだれか来たら、快く譲る。あ~なんでこんなことに‥

ちなみに、補給はほとんどしなくなっている。ジェル不味い
思うにハニースティンガーのフレーバーちゃんぽんは失敗だったな。
ハンガーノック気味⇒食欲減退⇒ジェル不味く感じる⇒飲まない⇒ハンガーノック加速
エネルギー切れの負のスパイラル一直線

そしてめちゃくちゃ息苦しい。キリアンザックの前コードを外し、心拍計も外してしまう。
もう心拍の管理など必要なしっ下がることはあっても上がらない。

出来る手は打つが、仕方がないのが杓子山までの激登り
疲労困憊の中、こんな激坂登れるのかな?と試走の時に思っていた。
ANSWER:登れます。毛虫並みに遅ければ
最初の岩場にはスタッフの方がいらした。この人このまま夜になっても誘導するんでしょうね。
頭が下がります
ここさえ登れば、すぐ杓子山~と思ったら、岩場の連続で全然たどり着かない。
こんな長かったっけ?もう距離感覚がバカになってます。

「一歩一歩脚出せば必ずゴールのもとへ」(by2012UTMB鏑木さん)を口の中で唱えながら、
それでも杓子山頂上へ
ちょっと腰をおろし、不味いジェルを口にし、一息ついてから下りへ。
下りは重力に従い脚を出すだけ。林道を走るのだが、ここでHOKAの威力
走りやすいし、これまでの牛歩が幸いし、それなりに走れる
ピュ~と(本人的には)走り、富士小学校へ。

富士小学校には家族およびスポルチバの方々が。
皆さんあれこれ世話を焼いてくれるが、あいにく気分が悪くて、何も食べられず
どうにかバナナを一本食べ、ストックを受け取り、早々に出発。

 富士小学校~ゴール

早々に出たのには訳があり、動かない頭で逆算してみるに、今以上ひどいことにならなければ、
といっても今以上に悪い状態は、想像するに恐ろしい、人として立っていられるか?くらいの
状況であろうが、どうやら30時間は切れるのでは?という淡い希望が見えてきたからである。

走れる精一杯の速度で走り、山にとりつく。もちろん、ゆっくり歩くのみ。
これまた、こんなに長かったな
ゆっくり歩いているはずなのだが、肩で息をしないと登れない。
これだけゆっくりに歩いて、息が切れるというのは人生で初めてではないだろうか?
この間もバンバン抜かれる。追う気力なし

長い登りが終わり、いよいよ下り。今までのように重力に従い~
というのもすでに終了を迎えており、歩いても息が切れるのに走ることなどできない。
そこを無理して走る。息が上がり切ったその先は‥ザ・リバース
サヨナラオレ。ついにやってしまったな。もう走れないか‥。
どうにかロードへ。下りのはずなのになぜか登る。登りといっても微妙な登りでほぼ平坦。
なんのことはない道なのだが、ボクの脚には大きな壁。
そういえばO原さんが試走の時に、下る前の登りがいやらしい、みたいなこと言ってたな。
心構えが少しだけできた。あ~ありがたい

疲れてはいても、歩きに対する罪悪感だけは依然心中に宿しており、
せめてもと30歩歩いて30歩走る。これUTMBで女子年代別入賞者の渡辺さんが
やっていた戦法。ちなみに60歳代の方。
まさか自分が使うことになろうとは‥。でも、メリハリが効いて有効だな~
林道に入り最後の下り。暗くなってきたのでハンドライトを点ける。息が上がると
再びリバースの危険があるので、息を切らさない程度に走る。
長く暗い下り坂、しかしゴールへ向かう喜びも、暗い坂を歩くように下る孤独屈辱感も
なにもない。
ただ下るのみ。だんだんと町の明かりが近付くが、たどり着けるという実感もない。
もしかしたら、このままずっと下り続けることになるのかも。むしろそういう風に
考えていたほうがいいのかも。

でも「一歩一歩脚出せば必ずゴールのもとへ」
ようやく下り終え神社に。その後ロードへ。もう走れない
30歩歩き30歩走る。
河口湖の周りをまわり、橋へ。
橋のたもとで再び湖畔を走る。ゴールまであと1K。
そこかしこにいる方々から「あとちょっと」だとか「もう少し頑張れ」だとかいただく。
ありがたい、ありがたいのだが、当方全く走れず、多分かなり、しょぼくれた姿を
さらしていると思われ、また激励の言葉に応えられる状態ではとてもなかったので、
足元を照らす街灯があるところではハンドライトを消して歩いていました

※後から聞いたところによると、橋のたもとにチェックポイントがあり、
このチェックポイントで、誰が来るかゴールでわかっており、DJの方が
ゴールを盛り上げる演出として「○○さん、あとちょっと~」などと
言っていたらしい。暗がりで歩くオレはアホである

それでもゴールへ。
家族やお世話になったスポルチバの方々やOSJのTさんらに出迎えられてゴール。
29:02。内心目標にしていた30時間はどうにか達成。
しかしゴール直後は何の感慨もなし疲れた疲れた。
しばらく座って、コーラ飲んだり(リバースしてからは一切のものを口にしていなかったので)
話をしたりして、まったりと。
そのうち寒くなってきたので、宿にもどる。
動かない体を無理やり動かしてお風呂に入り、バタンキュー
長くて苦しくて苦しくて苦しくて‥その時はそんなことしか考えられない旅が終わりました。