グランレイドカター~⑧終盤

走行距離も130キロを超えて、だいぶ疲れてきた。緩やかな坂道も走れなくなってきている。
本来ならばここで友人〇井さん目撃談による、某ランナーさんの「100マイル終盤に歯を食いしばり目を見開いて走る」をやるべきなのだ。
そう、それは分かっている。そしてそれが出来た時、ボクは何か神々しいものになれる気がする。
死んじゃうわけではないが、自分の存在は現在地よりちょっぴり天に近くなるのだ。
少し試みるも、疲れてすぐ歩いてしまう。体力的な問題もあるのだけれど、それ以上に心理的ブレーキが強い。
まだまだだなオレ‥。せめて出来る限り速く歩くことにする。

レース展開について考えた時、イーブンペースで最後まで走り切ることが理想的であり、自分にもそうした展開が性に合っていると思う。そして実際にそうした展開に持ち込もうとしている。だから、後半、他のランナーさんに後塵を拝す、ということはあまりない。
もちろん、途中でつぶれてしまうことも多いので、そういった場合は、そうした状況を驚くほど素直に受け入れてしまう。
こういうときのプライドの低さは、我ながらスゴイ。

だけど、今回はそうした状況になく、したがって、後ろを気にすることもない、ハズなんだけど‥。
130キロ過ぎの牧場を歩いていたら、後ろから人の気配がする。振り返ると、まあまあ若いお兄さんがガシガシ登ってくる。
そして、あっさり抜かれる。「この終盤まで力を温存していたのかな?それにしてもすごいペースだけど‥。」

こんなところをガシガシ。言い訳だが、だだっ広いところは走る気がしない。

さらに、エイドで補給をしていたら2人のランナーが入ってきた。また追いつかれた?
その後、この2人にも抜かれた。試しについていこうとしたけれど、速くってダメ。すぐに見えなくなってしまった。
「みんな、後半追い上げ型なのかなぁ?そんなにたくさんいるものかしら?」、しばらくしてさらに2人。

ここらへんでさすがにおかしいと気づく。5人目がやってきたときに振り返ってゼッケンを確認したら、105キロ部門の上位ランナー達だった。
※ 当大会は100マイル、105キロ、42キロの3部門のレースがあって、105キロはシャトーダルクが折り返し地点。

だよなぁ。おかしいと思った。ゼッケンは5人目の人しか確認できなかったけれど、おそらくそれまでの人も105キロ部門の人たちだろう。勘違いしていたおかげで、せめて彼らに遅れないようにしようとモチベーションが維持されペースダウンしなかったのはありがたかった。こうしたポジティブシンキング大事。

140キロ過ぎ?の牧草地では今大会の写真&動画を撮影している方々に遭遇。ボクを動画で撮り始めたので、格好良く走って見せる。結構疲れているけれど、ここは我慢だ。イケてる自分をアピールするため、と彼らが見えなくなるところまで走る。
格好つけて走って、体力を消耗し、ついでに集中力も消耗し、コースロストする‥。
慌てて戻ってみたら、農道を直角に曲がって別トレイルに誘導されているマークを発見した。ここには見覚えがある。なぜなら前回、自分がコースロストしたとこだから。2年連続で間違えるというバカっぷり。ココロ乱される。

いろいろなトレイル、牧場、村々を通って行く。全体を通して、かなり多くの区間で牛、ヒツジのウンチが散見される。
もちろん気を付けて避けていくが、これらすべてを避けるのは不可能だ。たぶん何回か踏んでいるな。
どうでもいいことだけど、牛のウンチはデカい。おまけに見た感じは土とかわらない。不自然に盛り上がっているからそれと分かるが、時間のたったものだと土と同化してよく分からない。
食べているもののせいか匂いは意外としない。しかし無臭でもないから、シューズ(と、まれにウェアなどにも)がそこそこウンチにまみれ、2日間汗まみれで過ごす自分の体臭も相まって、レース後の洗濯は中々の悲劇的修羅場となる。

牛ではないが、こんなホンワカ場面にも遭遇する。